このページでは、中小企業の経営に役立つ経営分析について解説しています。
      ちょっととっつきにくい部分もありますが、基本はとても簡単な「算数」ですので、ぜひゆっくりと読んで
      理解して頂ければと思います。 

 


 

 

 

《コンテンツ》

  
経営分析とは  収益性分析 安全性分析 生産性分析  固定費・変動費と限界利益の関係 損益分岐点分析
 

<経営分析とは>

経営分析とは、貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書 などから、会社の実力・能力、そして問題点を分析することです。専門的な難しい知識が必要ではないかと思われていますが、 実は手軽に身につける事ができるスキルです。経営分析を行うためには財務諸表の数値を用いますが、財務諸表そのものを作成する訳ではありませんから、「非常に難しいものである」という固定観念はまず捨てる必要があります。経営分析の算式は四則演算しかありませんし、簿記の知識が特になくても行うことができます。

 ただし、これらの分析をするときに最も重要なことは、分析の元となる決算書が正確であることです。いくら種々高度な分析をしたところで、その元となるデータに信頼が置けなければ、なんの意味もありません。経営分析は過去5年くらいの数字を使用することがあります。つまり、間違った数字を作るとその影響は5年くらい将来に引きずることもあると言うことです。

また、たとえば無理矢理利益を出そうとして、減価償却費を正規の金額より少なめに計上したとします。そうすると、翌年は固定資産の金額が正規の金額より多く表示されることになります。つまり、その多い金額だけ架空資産があることになり、これを解消するためには数年から、建物のように耐用年数の長い固定資産ですと10年以上かかることになります。その間経営分析をしても正しい数値はでないことになりますので、十分な注意が必要です。

 

〈収益性分析〉

この分析のねらいは、当該企業が如何ほどの収益をあげうる力(収益力)をもっているかを把握することにあります。企業が存在・発展していくためには少なくとも毎期なにがしかの利益を上げなければなりません。

経営活動が効果的であり、かつ企業の財務構造が健全であれば、その結果は必ず収益の増加となって現れるのです。つまり収益性の分析は、企業内容の良否を判断する上での基本的な分析として
最も重視しなければならないものです。
 
指標 (単位) 方向 算式 説明
1総資本対営業利益率(%) 営業利益
--------×100
総資本
企業が、本来の目的である経営活動に使用している投下財産、すなわち営業の純資本投資がその活動によってどれだけの利益を上げたかを見ます。この比率が高い程企業収益が良いといえます
2経営資本回転率(回)  ↑  売上高
--------×100
総資本
事業に投下された資本の回転速度を表わすものです。この回転率が高いのは、資本の回転度すなわち、資本の利用度が高いことを意味しています。
3売上高(完成工事高)
          対営業利益率(%)
営業利益
--------×100
売上高
企業の収益性、経営能率の良否を示す重要な比率で、利幅の程度を表すものです。
4売上高(完成工事高)
          対総利益率(%)
総利益
-------×100
売上高
この比率は売上高(完成工事高)に対する利益の割合を示すもので、とくに利益をどれだけあげたかは経営の最終的な関心事であり、収益性を判断するための基本的な一つの比率です。
5売上高対販売管理費率(%)
販管費
--------×100
売上高
1単位の売上げ(完成工事高)に対する費用がどれだけかかったかを示すもので、これが少ないほど販売コストや経費効率がよいことを示しています。
6売上高対経常利益率(%) 経常利益
--------×100
売上高
経営活動の結果の経常利益の状況を示すものです。この比率は営業外損益が多いか少ないかによって変化します。
7商品回転率(回) 純売上高
--------×100
総在庫
仕掛品、製品の在高は前期末と当期末の平均により、仕掛期間及び製品の手持期間を知ることが出来ます。すなわち、販売能率及び資本利用の経済性の良否を判断する基本的な比率の一つであるといえます。

                 ※は高いほど(大きいほど)良く、は低いほど(小さいほど)良いという意味です。
 

〈安全性分析〉

この分析の目的とするところは、財務構造の状態を明らかにして会社の財務的安全性を判断することにあります。
企業の経営活動には、売上不振、売掛債権の回収不能など種々のリスクがあります。また、仕入代金・人件費・諸経費支払い、借入金の返済など様々な支払い義務が発生します。したがって、企業は、これらのリスクに耐え得るだけの財務構造の健全性や支払いに支障をきたさないだけの手許流動性を確保しておく必要があります。


指標(単位) 方向 算式 説明
1自己資本対固定資産比率(%)

固定資産
---------- ×100
自己資本
建物、設備などの固定資産が、どの程度自己資本でまかなわれているかを測る基準で、この判定は100%以内であることとされています。
2固定長期適合率(%) 固定資産
--------------- ×100
自己資本+長期借入金
長期資本(自己資本と長期借入金の合計)が、どの程度、固定資産に投下されているかということ、つまり長期資本の固定化の程度を表わす指標です。この指標が100%を超えると短期資金で固定資産を賄うことになるため、資金繰りに窮することになります。
3流動比率(%)

流動資産
---------  ×100
流動負債
短期(1年以内)の借金と、これを返済するのに必要な財源を比較する比率でこの比率が大きいほど返済能力があり経営の安全が保たれていることを示しています。いわば企業の信用度を示すもので、150%以上を確保することが望ましいとされ、200%以上で優良企業といえます。
4当座比率(%)

当座資産
--------- ×100
流動負債
当座比率は、流動資産のうち、さらに流動性の強い現金、売掛金などと流動負債の割合をみようとするものです。
5総資本対自己資本比率(%)

自己資本
--------- ×100
総資本
企業が借り入れている資本と自己調達している資本の割合を示す。この比率は高いほど望ましいとされています。

 

〈生産性分析〉

この分析の目的は、どれだけの生産手段を投じて、いかほどの生産をあげることができるかということを判断することにあります。特に人件費などとして分配される付加価値をどの程度生み出したか、更に付加価値を人件費、純利益などとして、どの程度、労働、資本などに分配しているか、つまり、付加価値の生産と分配状況を分析するために用いられます。
指標 (単位) 方向 算式 説明 
(1) 資本生産性(円)

付加価値額
--------- ×100
総資本 

 ()付加価値額 = 純利益+金融費用+賃貸料+減価償却費+人件費+税金

生産要素は資本と労働に分解されるため、生産性も資本生産性と労働生産性に分けて示されます。
資本の額1円当たりの付加価値額を示すもので、投下資本の効率性を示す指標です。
(2) 労働生産性(円)

付加価値額
---------
従業員数
従業員1人当たりの付加価値額を示すもので、従業員から提供された労働力がどの程度効率的に機能しているかを見る指標です。
(3) 労働分配率

*

人件費
----------
付加価値額
付加価値が労働者にどの程度合理的に配分されているかを見る指標。労働分配率は高いことがよいとはいえず、労働分配率が高いことは、必要以上に労働者を雇用しているか、労働の生産性が低いかのいずれかであって必ずしも望ましいことではありません。

 

〈固定費・変動費と限界利益の関係

自社の経営状況を分析する場合に最もよく用いられる方法が、売上高と費用の関係に焦点を当てた方法です。商売の初歩的な公式は「売上額=利益+経費」ですが、この考え方を発展させて、「売上額=利益+固定費+変動費」とに分けるのです。

「変動費」とは、一定の生産能力や販売能力の下で、生産量や販売量が変化すると比例して変化する費用のことです。たとえば、原材料費、外注費、運賃、(販売量に比例するタイプの)販売手数料などがこれに当たります。

「固定費」とは、生産量や販売量の変化に関わらず変化しない費用、すなわち生産量・販売量がゼロでも発生する費用のことです。換言すれば
、一度増加してしまえばその後の売上高や生産量の変動に関係なく必要となる費用であり、会社設立からの時間が経過していく毎に増加していく傾向があります。正社員の人件費を中心として家賃、火災保険料、リース料、減価償却費、支払利息などがこれに該当します。

費用をこのように2つに分類すると、「売上高の変化に応じて利益がどう変わるか」が、わかりやすいのです。売上高から変動費だけを差し引いた利益を「限界利益」、また限界利益を売上高で割ったものを「限界利益率」と呼びます。限界利益率は、「売上高が一単位増加したときに、そのうちのどれだけの部分が利益の増加に結びつくか」を表す概念です。
 

         売上高―変動費―固定費=利益

         限界利益=売上高―変動費(=利益+固定費)

         限界利益率=限界利益÷売上高


限界利益は活力の源

上述の通り、売上高から変動費を差し引いたものが限界利益です。つまり限界利益は固定費と利益を加えたものであり、固定費というのは、会社を維持していくための費用であるとともに、限界利益を生みだすための生産力にもなります。固定費を効率よく使って、限界利益を大きくするかが会社の命運を決することにもなるのです。売上高を大きくすることも大切ですが、限界利益を増やすことに最大限の努力を傾注することが大切です。

※固定費と変動費の分解について
理論的には勘定科目法(個別費用法)によって各費用をはっきり固定費と変動費に区分できるものと、区分のはっきりしない準変動費(準固定費)に分け、準変動費(準固定費)をスキャター・グラフ法か最小自乗法などによって、変動費と固定費に分解するのが正しい方法です。しかし損益分岐点分析の第一の目的は、経営の効率化に利用できることであり、すぐに効果を出すことにあります。従って正確な費用の分解を行うことよりは、簡単に計算できる方法があれば有効であり、実務的には勘定科目法で充分と考えられます。
 

<損益分岐点分析>

事業というのはいくら売上額が大きくても儲からない場合があります。売上額を大きくするためには仕入代金の他に人件費や広告費等の新たな経費をかけなければならないため、売上額の中の構成が「利益額<経費」となれば赤字で儲からないことになります。事業を成功させるためには「利益額=経費」をクリアーして「利益額>経費」を早い段階で達成しなければなりません。「収支がトントン」(赤字でもなく黒字でもない)とした場合、売上がいくら必要なのかを示すものです。つまり、収益と費用が同額となる売上高、つまり「採算ライン」を明らかにする分析手法です。この「利益額=経費」つまり収支ゼロの地点を損益分岐点(Break-even-Point)といいます。

一般的に事業というものは、立ち上げ段階で損益分岐点に到達できない期間は非常に苦労するものの、損益分岐点をクリアーしてしまえばその後は順調に利益が伸びていく傾向が強いといえます。経営者達はよく「事業が軌道にのる」という言葉を使いますが、これは損益分岐点をクリアしたことを意味しています。

《算式》

  
損益分岐点売上高=固定費÷限界利益率 

《説明》 

損益分岐点売上高とは「利益=0」の時の売上高なので、
損益分岐点売上高―変動費―固定費=利益=0 限界利益=売上高-変動費なので、
損益分岐点売上高―変動費=限界利益=固定費
これを変形すれば、限界利益=損益分岐点売上高×限界利益率=固定費
 ∴損益分岐点売上高=固定費÷限界利益率=固定費÷(1−変動費/売上高)

 

上記の算式をグラフで表せば以下の通りとなります。

   

1.y=xであらわされる売上線(この線上では売上高=費用となる)をグラフに記入します。

2.y=F(F:固定費の額)の固定費線をグラフに記入します。

3.y=ax+Fの総費用線をグラフに記入する(係数aは変動費率を表します)

4.売上高線と総費用線の交点が損益分岐点で、そのxの値が損益分岐点売上高となります。

このグラフを見て分かるとおり、総費用線(固定費
+変動費)と売上線(原点からの45度線)の交点が損益分岐点を示しています。変動費・固定費をペイできる点が損益分岐点売上高で、これを下回ると赤字、反対にこれを超えると、利益が出て黒字となります。


上図から明らかなように、固定費を削減すれば総費用線が下方にシフトして損益分岐点が低くなり、利益が多く残るようになります。また
変動費率を下げる施策(原材料の購入費の値下げ交渉、購買先の変更等)により、変動比率aが下がり(総費用線の傾きが小さくなり)、やはり損益分岐点が下がります。損益分岐点を上回る売上目標をもって、冗費を抑制しムダのない会社経営をすることが大切です。

例えば月間売上額が1000万円、月間固定費が300万円、月間変動費が600万円の場合の損益分岐点は、300/(1−6001000)=750万円となります。赤字経営から抜け出るためには売上額を伸ばすことで損益分岐点をクリアするのが最善ですが、それが難しい場合には変動費、固定費のいずれかを削減することで黒字化することが可能です。そのために具体的に何円削減するのかは損益分岐点の計算式から明確にはじき出すことが可能です。また従業員を新規雇用すれば、固定費の上昇により確実に損益分岐点も上昇しますが、雇用前と同じ収益率をキープするためには、雇用後に売上を具体的にいくら上昇させれば良いのかも算出可能です。このように、採算性を数字で説明するノウハウが、銀行との折衝や企業経営には重要だということを覚えておきたいものです。


 
●損益分岐点比率でみる経営改善対策

損益分岐点比率が80%ぐらいにある企業では、好況時には黒字になるが不況になれば赤字になり、平均すると利益がでなくなる恐れがあります。低成長ないしデフレの時代においては、ますます利益を出すことは難しくなります。

業種にもよりますが、一般的に損益分岐点比率を60%以下に下げておけば安全圏といえます。そうすれば売上高が30%下がっても損益トントンの線まではいかず、まだ余裕が残ることになるからです。

■損益分岐点比率からみた経営合理化対策

◆損益分岐点比率が60%以下の場合
 利益は良好であり、コストダウンよりも、まず売上高を増やすことが重要。
 ●販売数量を増やす。
 ●新製品の開発。

◆損益分岐点比率が60〜80%
 損益分岐点比率を下げる必要があり、売上高を増やすとともに変動費の逓減が必要です。
《対策》
 ●販売数量を増やす。
 ●リベート等の再検討。
 ●代替材への切替えを行う。
 ●市販品、標準品の切替えを行う。
 ●集中購買、海外調達、長期購入契約などにより、原材料価格の引下げを要請する。

 ●無駄な在庫をもたず、倉敷料等の経費を節減する。
 ●運搬費用を減少させる。
 ●歩留率を引き上げる。
 ●原材料の使用数量を減らす。
 ●不良品の更正、屑・廃品の利用。
 ●製造方法の開発を行い、工数を短縮する。

◆損益分岐点比率が80%以上の場合
 無理な売上高の増大を狙うと、販売価格を下げなければならない結果になり、逆に金利の負担、販売費などの費用がかさみ利益率を低下させることになるので、逆に損益分岐点比率を高めることになります。むしろ、損益分岐点比率を少しでも下げる政策をとることが肝要です。

《対策》
 ●管理部門の組織変更と人員整理を行う。
 ●外注利用を考慮する。
 ●支払金利の低減をはかる。
 ●減価償却費と稼働率の再検討をする。
 ●固定給制度を能率給へ切り替える。
 ●退職金制度の再検討。
 ●間接作業の効率化をはかる。
 ●広告宣伝費、販売促進費、教育訓練費などの効率的利用。
 ●遊休資産および機械設備の処分をする。