このページでは、相続に関する基本的な手続きについて説明しています。当事務所はこれまでに300件以上の相続税申告業務に携わってまいりました。相続に関する問題やお悩みがありましたら、長年に亘る経験とノウハウを有する当事務所にお問い合わせ下さい。 相続について問い合わせる

 


 

 

《コンテンツ》

相続開始後の手続 
生前贈与と特別受益  相続時精算課税制度について 相続税基本の基本

相続開始後の手続

相続とは、被相続人の権利や義務(財産上の地位)を相続人が受け継ぐことです。相続人が何人かいるときは相続遺産はそれぞれの相続人の共有(全員のもの)になっていますので、その財産を各相続人のものにするために遺産を分割することが必要となります。遺産の分割は原則として遺言があれば遺言のとおりに分割し、遺言がなければ法定相続分にしたがって分割しますが、相続人みんなで話し合って相続人すべての同意があれば、どのように分割してもOKです。

誰がどの相続財産を取得するのかを決めるために相続人間で話し合うことを遺産分割協議といいます。
相続人の中に未成年者がいるときは親権者が法定代理人として協議しますが、親権者もまたその相続についての相続人であるときは、親と子の利益が対立する(親が自分の相続分の他に、子どもの相続分まで自分の好きなようにできてしまう)ので利害関係のない方か家庭裁判所に特別代理人を選任してもらう必要があります。

   〜相続開始後の手続きの流れ〜

   相続開始後の手続            要 件
被相続人の死亡 死亡後7日以内に死亡届の提出
葬儀 原則死後24時間以上経過していること
遺産・遺言書・相続人の調査 相続人の確定、遺産の調査及び評価
相続人全員で遺産分割の協議 協議不成立の場合は家庭裁判所に調停申し立て
遺産分割協議書の作成 署名(記名)、実印を押印
遺産取得の手続 所有権移転登記や預貯金、電話加入権などの名義変更
相続税の申告(遺産総額が基礎控除を超える場合) 相続開始後10ヶ月以内に申告、納付(金銭による一括納付が困難な場合、延納及び物納の制度あり)

 
借金(債務)も法定相続分に従って相続されますので、借金を引き継ぎたくない場合、債権者の同意があれば、遺産分割などで自分の借金債務をゼロにすることができます。その同意が得られない場合は、相続の放棄や限定承認という方法を検討する必要があります。 

生前贈与と特別受益

被相続人から生計の資本として贈与を受けていた等の場合には、相続分の前渡しを受けていたものとして相続分が減らされます。これを特別受益といいます(民法903条第1項)。すなわち特別受益とは、共同相続人の中で婚姻や生計の資本として金銭などの贈与を受けた場合等の特別の利益を意味しています。この特別受益を受けた者がいる場合、その受益を相続により受けたものとみなして法定相続分を算定しますので、相続人間の公平が図れることになります。

もっとも被相続人がこれと異なった意思を表示した時(持ち戻し免除の意思表示といいます)は、遺留分に反しない限度で尊重されますし、贈与を受けた金額が相続分を超える場合でも超過分を返還する必要はないと解されています。つまり
特別受益を相続財産に戻さなくてもよい旨の意思表示をしておけば、相続分を減らされません。

相続時精算課税制度について

平成15年に「相続時精算課税制度」が創設されました。これは、高齢化の進展を踏まえ、高齢者(65歳以上の親)の保有する資産を次世代(20歳以上の子)に円滑に移転させる観点から設けられた制度です。この制度の適用を受ける場合、贈与税の非課税枠が2,500万円あり、さらに、住宅投資促進を図る観点から、住宅取得資金の贈与も非課税枠を3,500万円に拡大されており、本制度を利用する人も毎年増えてきています。

そもそもこの制度は経済活性化のために設けられたものですが、利用の仕方によっては大きなメリットを得ることができる制度です。例えば、収益物件(アパートなど)を長男に贈与すれば、その家賃収入を長男が享受できますので、将来的な相続税の納税資金をプールしておいたり、或いは自社株を贈与することで、事業承継をスムーズに行うことができます。特に会社が黒字基調で株価(相続税評価額)が上昇しているのであれば、これは有効な相続税対策となります。というのは、本制度を用いて贈与を行った場合、相続税の申告時にこの贈与分を相続税の課税価格に加えて相続税額を算出するのですが(税務上の持ち戻し計算)、その加算額は「贈与時の評価額」であるため、贈与後の価値上昇分が相続税の課税価格に含まれないこととなり、その分だけ相続税の節税につながるからです。反対に贈与した資産の価値が目減りした場合は、その目減り分にも相続税が課税されてしまうため、自社株の価額や地価が下落基調にある時は、慎重な判断が必要となります。

また、税制と民法の「乖離」にも留意しなければなりません。 相続時精算課税制度を選択して生計の資本を贈与した場合、民法上は当然に特別受益としていわゆる持ち戻し計算を行う必要があります。その場合、上述の「税法上の持ち戻し」とは異なり、民法上はあくまでも相続開始時の時価により持ち戻し計算を行うことになります。例えば、3000万円の宅地を贈与し、相続開始時にその宅地の時価が5000万円になっていたとしても、相続税の課税価格に加えられるのは(=税法上の持ち戻し)3000万円ですが、特別受益の持ち戻し(=民法上の持ち戻し)は5000万円となります。こうした税務独特の規定を前提にした上で、相続人間の公平に配慮しつつ遺産分割を行う必要があります。

なお、分割協議におけるトラブルを避けるために、遺言書等で上述の「持ち戻し免除の意思表示」をしておけば、遺留分を侵害しない範囲で、特別受益たる贈与分を(民法上の)持ち戻し計算から除外することができます。相続時精算課税制度を選択した場合、相続開始後のトラブルを未然に防ぐためにも、持ち戻し免除の意思表示を活用する余地があるのではないかと思います。

相続税基本の基本

相続税の申告期限

相続税申告書は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内に提出しなければなりません。
ただし、申告書を提出する者が、10か月以内に出国するときは、その出国の日までに申告書を提出しなければなりません。
相続税申告書は、被相続人の死亡時における納税地の所轄税務署長に対して提出します。相続人の住所地の所轄税務署長ではありません。
また、申告書の提出は1通で足り、相続人分の申告書を提出する必要はありません。申告書は相続人が連署して押印することができます。

 

相続税の税額計算

まず相続税総額を算出

(1)  課税価格の合計額の計算
 相続税の計算は、まず相続又は遺贈により財産を取得した各人の課税価格の合計額を計算します。各人の課税価格は次のように計算します。
相続
財産
みなし
相続財産
非課税
財 産
債 務
控除額
相続開始前3年
以内の贈与財産
各人の
課税価格
各人の課税価格+各人の課税価格…=課税価格の合計額

(2)  課税遺産総額の計算
 課税遺産総額は、課税価格の合計額から遺産に係る基礎控除額を差し引くことにより計算します。
課税価格
の合計額
(遺産に係る基礎控除額)
5,000万円+1,000万円×法定相続人の数
課税遺
産総額

(3)  課税遺産総額を各相続人に法定相続分に従って分ける
 課税遺産総額を法定相続分で分割したものと仮定して各相続人ごとの取得金額を計算します。
課税遺産総額 × 各相続人の法定相続分 法定相続分に応ずる取得金額

(4)  相続税の総額を計算する
 法定相続分に応ずる取得金額に税率を乗じて、各相続人ごとに仮の相続税を算出し、その税額を合計して相続税の総額を計算します。
法定相続分に応ずる取得金額×税率−控除額=仮相続税額
法定相続分に応ずる取得金額×税率−控除額=仮相続税額
            ・
            ・
            ・
仮相続税額+仮相続税額…=相続税の総額
(5)  各相続人ごとの納付すべき相続税を計算する
 相続税の総額が計算できたら、それを各相続人が実際に相続した額に応じて按分し、各相続人ごとの相続税を計算します。各相続人ごとに算出した相続税額から各相続人ごとに該当する2割の加算額や配偶者の相続税の軽減、未成年者控除、障害者控除、贈与税額控除などの控除額のうち、該当するものがあれば、これを各相続人ごとの相続税から差し引いて、納付すべき相続税額を計算します。
相続税
の総額
× 各人の課税価格 各相続人
の相続税
課税価格の合計額
各相続人
の相続税
配偶者軽減・未成年者控除
障害者控除・贈与税額控除など
納付すべき
相続税額
相続税の速算表
法定相続分による各人の取得金額 税 率 控除額
800万円以下
1,600万円以下
3,000万円以下
5,000万円以下
10,000万円以下
20,000万円以下
40,000万円以下
200,000万円以下
200,000万円超
10%
15%
20%
25%
30%
40%
50%
60%
70%
40万円
120万円
270万円
520万円
1,520万円
3,520万円
7,520万円
27,520万円

計算例

上記の通り、相続税の計算は、まず実際の分割内容に関係なしに、単に法定相続分で相続したと仮定して計算します。例えば、課税評価額が1億2,000万円、配偶者と子3人が相続した場合は、基礎控除額9,000万円を控除しますので、課税遺産総額は3,000万円になります。
これをもとに、法定相続分で相続した場合の各相続人の税額を計算し、相続税の総額を算出します。
 

(課税遺産総額)

1億2,000万円-(5,000万円+1,000万円×4)= 3,000万円

(各自の法定相続分)

配偶者は課税遺産の1/2= 1,500万円

子は課税遺産の1/2×1/3=1/6= 500万円

(各自の相続税額)

配偶者 1500万円×税率15%-控除額40万円= 185万円

子1人 500万円×税率10%-控除額0万円= 50万円

(相続税の総額)

配偶者185万円+子50万円×3人= 335万円


ところで、上記の計算は、課税評価額全体にかかる相続税の総額を求めるための計算に過ぎません。実際の分割では、最終的に合意した分割財産の評価を、各相続人ごとに個別に計算していきます。その際最初の基礎控除以外にも、相続に関する各種の控除や特例があります。特に配偶者が相続人になった場合は、優遇措置がありますから、それらを利用した場合を考えてみましょう。

■配偶者の税額軽減特例を活用しましょう

被相続人の財産形成に一定の役割を果たしたとして、配偶者控除(配偶者の税額軽減)があります。配偶者には法定相続分か、または1億6,000万円のどちらか大きい金額以内であれば、相続税はかかりません。

上記の例の場合は、配偶者の法定相続分でも6,000万円ですから、課税されることはなくなります。そして、子3人分の150万円が相続税総額となります。ただし、この特例は、遺産が未分割の場合は適用されませんから、申告期限の10ヶ月以内に分割をすませた上で、申告しなければなりません。

■小規模宅地等の評価減の特例

これは、相続人の生活の基盤となる最小限必要な財産を守る目的から、居住用宅地や事業用地の一定面積の評価を減額する特例です。相続人が引き続き住居として住み続ける等、一定の要件を満たした場合に居住用宅地は240uまでの部分、事業用地では400uまでの部分に限って評価額80%を減額できるというものです(要件を満たさない場合でも200uまでの部分は50%まで減額できます)。

大都市圏にある一般的なマイホームであれば、240u(約72坪)以内で収まるケースが多いでしょうし、少し面積が増えても、上記の面積部分については減額が認められますから、この特例はぜひ活用したいものです。

先の相続例で、配偶者と子3人が相続した課税評価額1億2,000万円のケースで考えてみましょう。自宅は200uで路線価が400,000円とすると、評価額は8,000万円で、80%の特例を適用すると、自宅の評価額は1,600万円となり、課税評価額が6,400万円減額されるため、基礎控除額の9,000万円以内に収まり、相続税の納付は必要なくなります。

■特例は申告してはじめて有効

相続の際の「配偶者の税額軽減特例」や「小規模宅地等の評価減の特例」は本来納税の対象となる財産に関して、特別に減額を認められるものですから、申告をしてはじめて有効になりますので、充分注意してください。

■申告期限とは納付期限のことです

サラリーマンの方は、毎月の給料から源泉徴収されていますから、納税時期の感覚があまりないと思います。通常、税金の申告期限というのは、同時に納付期限を意味していますから、納税が必要なケースでは納付金の準備が必要となります。

期限内申告(相続開始後10ヶ月以内の申告)でなければ使えない特例も活用できなくなりますから、当初から10ヶ月間の目標を定めて、さまざまな手続きを進めることが必要となります。

※相続税が支払えないときは

相続税を計算してみたら、予想外に多額で、とてもそんな大金を直ぐには用意できない。また、相続した財産の大半が不動産で、直ぐに売って現金を作ることもできそうにないというケースもあることでしょう。

税金の納付は現金が原則ですが、相続の場合は、「延納制度」「物納制度」が特例として認められています。相続財産の大部分が土地などで、直ぐに現金化しにくい場合は、20年間の延納も可能です。ただし、当然のことながら、いずれも一定の利息(利子税)を払う必要があります。

相続したがために、延納という借金をするのはイヤだ、と思う人には「物納制度」があります。ただし、物納できるものは限られていて、しかも優先順位がありますから、自分の要らないもので物納することはできません。

その優先順位は、

@ 国債や地方債
A 不動産や船舶
B 社債や株式・証券投資信託と貸付信託
C 動産

と決められています。